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小説をよく読む私は友人から「今まで読んだ中で一番どの小説が面白かった?」と聞かれます。 その質問は本当に困ってしまいます。読めば読むほど小説というものの面白さや奥の深さに気づかされるので、どれを一番ということができないからです。ただ、これから小説を読みたいという人に勧めているのは志賀直哉の「剃刀」です。 この「剃刀」はものすごく短い小説で、小一時間ほどで読み終えることができます。 私が一番感心するのは、そんな短い小説の中に主人公のバックグランドが余すところなく網羅されていることです。 剃刀を使って客のヒゲを剃る職人になり、店を任されることになった経緯が描かれ、なおかつ、誰もが感じ得る日常のイライラや家族に対するストレスなどが描写されています。 そこに一人の客が表れ、その客との関係性からある事件へと発展するのですが、このプロセスが実に理不尽で、そして見事で、読み終えたあと「なるほど」と唸ってしまいます。 言葉のチョイスも素晴らしく、日本語をこんなに細やかに駆使できるのかと、言語の柔軟性に感動します。 もちろん、「剃刀」以外にも素晴らしい小説はたくさんありますが、短いものならこれが一番です。